サッカーにおける暑さ対策


熱中症対策 (日本サッカー協会)


 下記の資料に記載されている熱中症対策が、今年度より少年の大会や練習試合などにも適用されますので、内容の理解をお願いいたします。

  熱中症対策ガイドライン


こどもの体温調節能力について (日本体育協会)


 夏のトレーニングでとくに重要になるのが、体温調節機能の働きです。人間の体温は、通常からだが発生する熱と汗の蒸発などによって失われる熱とのバランスをとることによってほぼ一定に保たれています。しかし、夏には高温多湿な環境によって、熱の放射は妨げられ、さらに激しい運動を行うことによって熱産生が増加すると、体温は著しく上昇します。こどもと大人の体温調節機能の違いを、体温の変動に関係する主な要因について比較すると、次のようになります。


  1.基礎代謝量  :高い

  2.体表面積   :高い

  3.発汗量    :低い

  4.血管調整反応 :低い


 さらにこどもは、体温の支配神経である自律神経の働きが未発達である。体温1°C上昇当たりの発汗量(発汗率)は低い、暑さへの適応に時間がかかる、などの理由から体温は環境温に影響されやすく、大人に比べて高体温となりやすいからだであるといえます。当然熱中症にかかる危険性が高くなりますので、体調の良・不良、水分補給、休息などを考慮した熱中症予防対策を心がける必要があります。


試合中の体重減少(発汗量) (日本サッカー協会)


 わずかな脱水症状でも運動能力やスキルの発揮が妨げられます。体重の2%の脱水で5~25%の運動能力の低下がありうることが、 研究結果としてわかっています。すなわち前半で2%の脱水が認められた選手は、ハーフタイムに水分補給をしないと後半の運動能力が約20%低下することになります。


試合中にも水は飲めるのか?


 ひと昔前の日本のスポーツ指導は「水は飲むな!我慢しろ!」という精神主義を前面に押し出したものでした。でも、今は違います。最近のサッカーは試合中でもアウトオブプレーを利用して水を飲めるようになりました。このように飲水が認められるようになったのは、ワールドカップスペイン大会(1982)からです。その目的は健康管理と競技力の低下を考慮したものです。ただし、飲物中の化学物質が人工的なトラックなどの施設や芝を痛めることを考慮して「水」ということになっていますから、くれぐれも間違いのないようにしてください。


夏期にサッカーを実施する際の留意点


 効果的な水分摂取は、運動パフォーマンスの低下を防ぐだけではなく、暑熱環境下での熱障害の予防という点からも大変重要です。


 (1)何を飲むか

  ■ からだへの吸収の速さを考え、糖分と塩分を含んだもの。

  ■ 運動後は汗によって失われたイオンを補うことが重要です。イオン飲料(スポーツドリンク)を摂取するとよいでしょう。

   (スポーツドリンクが飲めない人、環境の場合は水でも構いません。)

 (2)温度 ・冷たく飲みやすいもの。約10°C~15°C ・からだの冷却効果も期待できます。

 (3)摂取量

  ■ 総水分摂取量:発汗量と同量 ・1回の摂取量:200~300ml(コップ1杯)程度

 (4)タイミング

  ■ こまめに水分を摂取しましょう。尐なくとも15分毎。

  ■ 「のどが渇いてから」水分を補給したのでは遅く、「のどが渇く前」に水分を摂取する習慣をつけましょう。

 (5)体重測定 ・運動前後に体重測定を行い、水分摂取が十分であったかをチェックしましょう。


 暑さに耐える能力は馴れによって異なります。熱中症は、梅雤の合間や暑くなり始めの数日間に発生する事が多く、夏だけではなく春や秋にも起こることがあります。それは「暑さに馴れていないことが最も大きな原因の一つ」です。暑い環境のもとで運動を続けると運動能力が改善され、暑さに強くなりますが、これを暑熱馴化といいます。暑熱馴化すると、からだの水分量及び血液量が増加します。その結果、皮膚への血液量が増加し、熱はからだの深部から表面に運ばれ放熱されやすくなります。さらに、体温が著しく上昇する前に発汗量が増加して蒸発による体温調節が効果的に行われます。また、汗は薄められて血液中の塩分の損失が尐なくなります。したがって、暑熱馴化では水分を摂取して血液量を維持することが大切です。


 暑熱環境下の運動時には、汗が蒸発しにくく、時には深部体温が40°Cにも上昇してしまいます。この高体温は身体の乱れを知らせる 危険信号として、脳や末梢の生理機能に影響を及ぼし、疲労を誘発して、運動パフォーマンスを減少させてしまいます。このような環境下で安全、かつ高いパフォーマンスを発揮するためには、体温上昇や脱水レベルを低く抑えることが重要です。その方法として水分摂取や暑熱化の他に、氷や水を用いたアイシング(クーリング)があげられます。運動中は、大腿部などの大きな筋群に水をかけ冷やしたり、脳は高温になると働きが低下するので、頭部や頸部に水をかけることが有効です。休憩中は、上記に加え足の付け根など、大動脈部位を氷でひやすと有効です。


[ 日本体育協会の資料、日本サッカー協会の資料(サッカーの暑さ対策ガイドブック)より抜粋 ]



熱中症とその救急処置


 熱中症では予防が大切です。暑いときには熱中症の兆候に注意し、おかしい場合には早めに休むことです。万が一の事故に備えて救急処置を知っておく必要があります。各病型での救急処置を下記にまとめました。実際にはこのような病態が重なっていることもあり、現場では熱疲労か熱射病か判断に迷うことも十分考えられます。その際注意すべき症状は意識状態と体温です。軽い意識障害では、意識はあるものの応答が鈍かったり、応答がとんちんかんだったりすることがありますが、尐しでも意識障害がある場合には重症と考えて処置する必要があります。意識がない場合には、心停止や頭部外傷のこともあり、呼吸が有るか、脈が触れるか、頭を打っていないかなどに注意する必要があります。


熱中症の病型 (1)熱失神


暑熱環境下でスポーツ活動を行うと、体温調節のために皮膚の血管は拡張します。このような皮膚血管の拡張によっておこる循環不全を熱失神と呼び、脈が速くて弱くなり、顔面蒼白、呼吸回数の増加。唇のしびれなどがおこり、一過性の意識喪失をおこすこともあります。


熱中症の病型 (2)熱疲労


大量の汗をかき、水分や塩分の不足がおこり、熱疲労の原因となります。熱疲労では、脱力感、倦怠感、めまい、頭痛、吐き気などの症 状がみられます。


熱中症の病型 (3)熱けいれん


汗をかくと水と塩分が失われます。汗の塩分濃度は血液の塩分濃度より低いため、大量の汗をかくと血液の塩分濃度は高くなります。 大量の汗をかき、水だけを補給した場合には反対に血液の塩分濃度が低下し、その結果、足、腕、腹部などの筋肉に痛みを伴ったけいれんがおこるのが熱けいれんです。暑熱環境下で長時間の運動をして大量の汗をかく時に起こるもので、通常のスポーツ活動での発生は尐ないといえますが、最近ではトライアスロンなどで報告されています。


熱中症の病型 (4)熱射病


高温環境下で激しい運動を行うと、運動により発生した熱が体表面から放散することができず体温が上昇し、その結果脳の温度が上昇して体温調節中枢に障害がおよぶと熱射病になります。熱射病では異常な体温の上昇(40°C以上)と吐き気、めまい、意識障害、ショック状態などを示します。また血液の凝固因子が消耗して血液が固まらなくなったり、脳、心、肺、肝、腎などの全身の臓器障害を合併することが多く、死亡率も高くなります。



熱中症の救急処置


1)熱失神、2)熱疲労


涼しい場所に運び、衣服をゆるめて寝かせ、水分を補給すれば通常は回復します。足を高くし、手足を末梢から中心部の向けてマッサージするのも有効です。吐き気やおう吐などで水分補給ができない場合には病院に運び、点滴を受ける必要があります。


3)熱けいれん 生理食塩水(0.9%)を補給します。


4)熱射病


 死の危険のある緊急事態です。体を冷やしながら集中治療のできる病院へ一刻も早く運ぶ必要があります。いかに早く体温を下げて意識を回復させるかが予後を左右するので、現場での処置が重要です。


 熱射病が疑われる場合には、直ちに冷却処置を開始しなければなりません。冷却は皮膚を直接冷やすより、全身に水をかけてあおぐ方が気化熱による熱放散を促進させるので、放熱の効率が良くなります。また、頸部、脇下(脇の下)、鼠径部(大腿の付け根)などの大きい血管を直接冷やす方法も効果的です。またとっさの場合、ちかくに十分な水が見つからないときの効果的な身体の冷却法として、次のことを実行してください。水筒の水、スポーツドリンク、清涼飲料水等を口に含み、患者の全身に霧状に吹きかけてあげてください。全身にまんべんなく吹きかけることにより、汗 よる気化熱の冷却と同じような効果をもたらします。これらの液体は、冷たい必要はありません。また熱射病では合併症に対して集中治療が必要ですので、このような冷却処置を行いながら、設備や治療スタッフが整った集中治療のできる病院に一刻も早く運ばなければなりません。熱射病は、死の危険が差し迫った緊急疾患であることを十分認識して下さい。


[ 日本サッカー協会の資料(サッカーの暑さ対策ガイドブック)より引用 ]

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